2009/11/05

研修2年目、水俣病大検診に参加して~トトロのふるさと10月号より



←写真は問診風景

私は昨年の春、埼玉協同病院に就職しました。理由は、実戦的な研修内容で実力がつきそうだから、先輩若手医師が理想にできそうな人たちだったから、そして出身地の病院だったからです。
埼玉協同病院は、全日本民主医療機関連合会(略称、“全日本民医連”)という個性の強い組織に属しています。
私にはまだわからない側面もたくさんありますが、おそらく“金銭的な障害や生活面でのハンデにとらわれず、すべての患者さんが平等に受診できる医療を”と、めざす医療像ががっちりとある団体です。
しかし、私は取り立てて民医連の考え方に魅かれて就職したわけではありません。むしろ、この民医連という言葉につきまとう“政治色の強い団体”というイメージが嫌でした。
今回、先輩医師の勧めで、9月に熊本県水俣で行われた水俣病大検診という大規模な企画に参加しました。健康障害がありながら、しっかりと診察・診断を受けていない水俣病患者さんを洗い出して、水俣病の実態をもっと明らかにしようという目的の検診です。熊本民医連が中心になって、全国から140人の医師が水俣に集まり、1400人以上の検診希望者が受診しました。
当日の会場は人であふれており、状況を把握することが難しかったのですが、スケールのでかいことをやっているという印象でした。
明らかに症状があるのに、水俣病における補償制度を何も利用されていない方が多くいることに驚きました。理由は制度を知らなかった、周囲の目が気になってなどでした。
最初はいかにも民医連という活動に思えて、やや腰が引けていました。しかし、実際にはこの機会を求めて神奈川や滋賀といった遠方からも多くの人たちが受診に訪れてきました。“民医連的な活動”と思っていたこの企画を待っていた人が大勢いたわけです。しかも、民医連以外の医療機関からも多く参加していました。
ともすれば国に対して物申すようなこの企画ですが、決して間違ったことはしていないし、多くの人たちの役に立ったのだと思います。
よいものを見せてもらったというのが率直な感想です。
最近読んだ雑誌の受け売りだと、Doctorの語源はラテン語で教えるという意味だそうです。ですから、患者さんや家族を啓発するのも医師の仕事なのだとも書いてありました。今回の水俣病大検診も水俣病の実態を明らかにすることに加えて、患者さんたちの啓発、マスコミを通したメディア視聴者の啓発が重要な意味合いを持っていたのではないかと思います。
若輩者の私がいうのはおこがましいですが、やはり患者さんにとってわかりやすい説明(啓発という意味含め)と治療をするのが理想だと思います。そうすることで、いろいろな選択肢がある中でいろいろな価値観を持つ患者さんが、満足のいく意思を決めやすくなります。医療者にとっては労力がかかるし、簡単なことではありませんが。
私は今でも民医連にどっぷり浸っているつもりはありませんし、その必要はないと思っています。大きな組織なのですから、いろいろな考えを持った人がいて当然です。
ただその確固とした理念ゆえに、今回のように誰が見てもすごいと思うことを成すことができます。こういう企画なら、また参加させてもらっても悪くないとズルいことを考えてしまいました(笑)。


2年目研修医 I.S.MDr